【基礎】なぜサーボはピタッと止まる?仕組みは「借金返済」で理解せよ

  • URLをコピーしました!
\ 迷子にならないための地図 /

未経験から一人前への
「最短ルート」公開中

独学で「何から勉強すれば…?」と悩んでいませんか?
現場で戦える知識を、体系的にまとめました。

FA電気設計ロードマップを見る

「この搬送コンベアはインバータだけど、こっちの昇降機にはサーボを使うぞ」

現場で図面を見ていると、当たり前のように使い分けられていますよね。 新人君に「なんでですか? インバータじゃダメなんですか? サーボってなんであんなに高いんですか?」と聞かれたら、どう答えますか?

「精度が良いから」なんて答えじゃ、エンジニアとしては50点です。 「じゃあなんで精度が良いの?」と突っ込まれたら終わってしまいますからね。

今日は教科書の難しい言葉は抜きにして、数々の装置調整を行ってきた現役設計者が現場でイメージしている「サーボが動く理屈」を教えます。 キーワードは、「目隠し」と「借金」です。

結論から言うと、インバータとサーボの違いは「結果に対して責任を持つかどうか」です。

……ですが、それだけ理解しても現場では通用しません。 なぜなら、責任感が強すぎるあまりに暴走する「ハンチング」というトラブルが待ち受けているからです。 その原因である「借金(偏差)」の正体について、詳しく解説します。


目次

決定的な違い:「やりっぱなし」か「確認するか」

結論から言うと、インバータ(汎用モーター)とサーボモーターの違いは、「結果に対して責任を持つかどうか」です。 かっこよく言うと、開ループ(オープンループ)か閉ループ(クローズドループ)かの違いですね。

インバータは「目隠しのピッチャー」

一般的なインバータ制御(V/f制御)は、モーターに対して「60Hz(速度)で回れ!」と電気を送るだけです。

これを野球のピッチャーに例えると、「目隠しをしてボールを投げている」状態です。 「ストライクゾーン(指令)」に向かって投げたつもりでも、実際にボールがどこに入ったか、キャッチャーが取れたか(負荷がどうなったか)は、インバータ自身は知りません。

  • ベルトが切れて空回りしていても気づかない。
  • 荷物が重すぎて回転数が落ちても、電気を送り続けるだけ。

これでは、「ボールを3個分右に投げて(=1mm単位の位置決め)」なんて怖くて任せられませんよね。投げた結果が見えていないのですから。

サーボは「結果を見る管理者」

一方、サーボモーターのお尻には「エンコーダ」というセンサ(目)が付いています。 こいつが「今、何度回ったか」を常に見張っています。

指令を出した後、「で、実際どうなった?」と結果(フィードバック)を確認し、ズレていればその場で修正します。これが「フィードバック制御(閉ループ)」です。

この「確認作業」をしているからこそ、サーボは僕らの期待通りに動いてくれるわけです。

インバータ(オープンループ制御)とサーボ(クローズドループ制御)の違いを野球に例えたイラスト。左側は目隠しをして結果が見えていない「インバータ(CHAOS PITCH)」、右側はハイテクなゴーグルで的(指令位置)を正確に狙いフィードバックしている「サーボ(PRECISION PITCH)」。
図:「目隠しのインバータ(左)」と「結果を見るサーボ(右)」の違い

サーボの心臓部:「偏差カウンタ」を理解せよ

ここから少しだけ中身の話をします。 サーボアンプの中には、「偏差カウンタ(溜まりパルス)」という箱があります。 これを理解すると、現場でのトラブル(ハンチングや異音)の原因が手に取るように分かるようになります。

イメージはずばり、「借金返済」です。

  1. 指令パルス(借金発生): PLCから「1000パルス進め」という指令が来ると、偏差カウンタに「+1000」溜まります。これが「やらなきゃいけない仕事(借金)」です。
  2. モーター回転(返済開始): サーボアンプは「借金があるぞ!働け!」とモーターに電流を流します。モーターが回ると、エンコーダからパルスが返ってきます。
  3. フィードバック(消し込み): 1パルス進むごとに、偏差カウンタから「-1」されます。
  4. 完済(位置決め完了): 偏差カウンタの中身が「0」になった瞬間、モーターは止まります。

「遅れる」と「強くなる」理由

もし、荷物が重くてモーターがなかなか回らなかったらどうなると思います? PLCからは次々と指令(借金)が来るのに、返済(回転)が追いつきません。すると、偏差カウンタの中身(溜まりパルス)がどんどん増えていきます。

するとサーボアンプはこう考えます。 「おい! 借金(偏差)が減らないぞ! さっきより強い電流(トルク)を出して無理やりにでも回せ!!」

これが、サーボが負荷変動に強い理由です。「遅れたら、その分だけ本気を出して取り戻す」という仕組みが、物理的に組み込まれているんです。

サーボアンプ内の「偏差カウンタ」の働きを「借金返済」に例えた図解。指令パルス(借金の申し込み)が偏差カウンタ(借金残高)に溜まり、モーター(労働者)が回転してフィードバック(返済)することで残高をゼロにする仕組みを説明。

なぜ「ハンチング(振動)」するのか?

この「借金返済」の仕組みがわかると、現場でよくあるトラブル「ハンチング」の原因も見えてきます。

偏差カウンタを「0」にしようと必死になるあまり、勢いよく回しすぎて「通り過ぎて」しまったら? 今度は「マイナス(行き過ぎ)」という借金ができるので、慌てて「逆回転」して戻そうとします。

  • 行き過ぎる(オーバーシュート)
  • 戻しすぎる(アンダーシュート)
  • また行き過ぎる…

これを繰り返して「ウワンウワン」と唸っている状態がハンチングです。 要するに、「真面目すぎて、加減を知らない状態」なんですね。

これを「ちょうどいい湯加減」に調整してあげる作業こそが、次回解説する「ゲイン調整」です。

サーボ制御におけるオーバーシュート(行き過ぎ)のステップ応答グラフ。指令目標値に対して実際の動作が行き過ぎてしまい、目標値に戻ろうとする挙動(ハンチングの予兆)を示した波形図。

まとめ:サーボは「ズレ」を許さない

  • インバータ: 指令を出すだけの「やりっぱなし制御」。
  • サーボ: エンコーダで監視する「フィードバック制御」。
  • 仕組み: 「偏差(借金)」がゼロになるまで、意地でもモーターを回そうとする。

この「偏差カウンタ」のイメージを持って現場の機械を見てみてください。 「完了信号が出ないのは、まだ借金(溜まりパルス)が残ってるからだな」 「ゲインを上げるってことは、借金の取り立てを厳しくするってことか」

そう考えると、今まで意味不明だったパラメータが少し可愛く見えてきませんか?

次回は、この制御をさらに深掘りして、サーボ内部にある「3つの制御ループ(位置・速度・トルク)」について解説します。 「位置決めが遅い!」と悩んでいる方、必見です。

あわせて読みたい
サーボのパラメータ地獄から脱出!内部の「3つのループ」を組織図で解説 「サーボのパラメータが多すぎる…」実は中身は「社長・部長・現場」の3重組織になっています。この構造さえ理解すれば、ゲイン調整で迷うことはありません。初心者向けに「命令の順序」を図解で解説します。

サーボ制御マスターへの道(実務力強化ロードマップ)

サーボモータは「回ればいい」ものではありません。狙った通りにピタッと止め、振動を抑え、安全に稼働させて初めて「制御」と呼べます。

以下の記事を順に読み進めれば、現場で「なんとなく」触っていたサーボのパラメータや挙動が、理論の裏付けを持って理解できるようになります。 「とりあえずオートチューニング」から卒業し、自分の意図でモータを操れるエンジニアを目指しましょう!

▼ Step 1:まずはここから!サーボの「基礎体力」をつける

▼ Step 2:「MR-J5」を使い倒す現場の技術

💬 更新情報を X (Twitter) で発信中!

記事の更新通知や、現場で役立つ「電気制御の小ネタ」をツイートしています。 また、「記事のここが分からなかった」「現場でここが困っているけどどうしたらいい?」といった疑問があれば、DMで募集しています!個別のトラブル相談も、ブログのネタにさせていただけるなら大歓迎です!ぜひフォローして気軽に絡んでください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次