「何を準備すればいいかわからない」 「先輩によって使っている道具がバラバラで迷う」
そんな新人エンジニアのあなたへ。 結論から言います。まずは「形」から入ってください。
プロの現場において、道具は単なる作業用品ではありません。あなたの技術不足を補い、ポカミスを防ぎ、「こいつ、分かってるな」と周囲に思わせるための「武器」です。
この記事では、FA(ファクトリーオートメーション)の現場で実務経験を積んだ私が、「これさえ買っておけば明日から仕事ができる」という必須ツールを厳選して紹介します。
ただし、ニッパーの選び方を間違えると、現場で「出禁レベル」の事故を起こしかねません。必ず最後まで読んで、正しい道具を選んでください。
【ハードウェア編】FA電気設計者の「三種の神器」
電気設計者が現場に持ち込むべきハードウェアは、以下の3つのカテゴリーです。ここにお金をケチると、仕事の効率が劇的に下がります。
① テスター:迷ったら「HIOKI」一択
電気屋にとっての聴診器です。これがないと何も始まりません。 現場では「電圧が来ているか(活きているか)」を確認する場面が多発します。
- 本気で選ぶなら:HIOKI(日置電機) デジタルマルチメータ DT4256
- プロの定番。堅牢で、機能が豊富。これを腰にぶら下げていればナメられません。
- 携帯性重視なら:HIOKI カードハイテスタ 3244-60
- 胸ポケットに入る薄型サイズ。ちょっとした導通チェックならこれで十分。ベテランはこれをサブ機として持っています。
★先輩からのアドバイス 「Amazonで売ってる謎の激安テスター」はやめておきましょう。誤測定は現場での事故(短絡・感電)に直結します。信頼できるメーカー製を買うのが、自分の身を守る第一歩です。
② ドライバー:革命的「電ドラボール」
制御盤の端子台を締める作業は、一日数百回に及びます。手回しドライバーだけで戦うのは、竹槍で戦車に挑むようなものです。
- 必須アイテム:ベッセル(VESSEL) 電ドラボール 220USB
- これは業界の革命です。手回しのグリップ感そのままに、電動アシストが付いています。これを使うだけで、作業スピードが3倍になります。
- サブウェポン:精密ドライバー:ベッセル(VESSEL) TD-56S
- PLCの端子台や、センサーの感度調整ボリュームを回すのに必須です。
- 100均のものではなく、グリップが回るタイプを選びましょう。ステンレス製で錆びにくく、現場で長く使えます。
③ 切断ツールの「二刀流」セット
配線作業において、「切る」と「剥く」はセットです。 プロは安全と品質のために、あえて2つの道具を使い分けます。これが3つ目の神器です。
A. 結束バンド専用:キャッチニッパ
配線作業で新人がやりがちなのが、「切り取った結束バンドの破片を盤内に落とす」こと「たかがゴミ」と思ってはいけません。これがPLCの冷却ファンに吸い込まれて「熱暴走」を引き起こしたり、マグネットスイッチの隙間に挟まって「動作不良」の原因になったりと、時限爆弾のように装置を止めます。
- おすすめ:フジ矢(Fujiya) キャッチニッパ 90CS-125
- 最強の安全機能: 切断した破片をニッパーが「掴んで」離しません。盤の奥深くで切っても、破片が飛んでいかないので異物混入事故がゼロになります。
- 完全なツライチ: プラスチック専用刃なので、カミソリのように鋭く、切断面が完全に平ら(ツライチ)になります。後から手を入れた先輩を流血させることもありません。
- 【重要】絶対ルール: これは「プラスチック専用」です。電線や鉄線は絶対に切らないでください。太い電線を切ると一発で刃が欠けます。
B. 電線作業専用:ワイヤーストリッパー
キャッチニッパを装備する場合、電線を切ったり剥いたりする道具が別途必須になります。 そこで選ぶべきは、カッター機能が付いたこのモデルです。
- 必須アイテム:ベッセル(VESSEL) ワイヤーストリッパー 3500E-1
- 切る・剥くの二刀流: 根元に鋭い「ワイヤーカッター」が付いています。これで電線をバチッと切断し、先端の穴で被覆を剥く。この一本で配線作業が完結します。
- 軽量コンパクト: 重さはたった100g。腰袋に入れても邪魔になりません。
2. 【ソフトウェア編】設計者の「脳みそ」を作る3つのソフト
ハードウェアが「手足」なら、こちらは「脳みそ」です。会社支給のPCに入っているか、真っ先に確認しましょう。
① PLC開発ソフト(国内3大メーカー)
日本のFA現場における共通言語です。ラダー回路を書くだけでなく、他人の書いたプログラムを読んで「動きを解析する」ために必須です。
会社によって派閥がありますが、以下のいずれかは必ず使うことになります。
- GX Works3(三菱電機): 国内シェアNo.1。まずはこれの操作を覚えるのが業界の標準ルートです。
- KV STUDIO(キーエンス): 直感的な操作で、若手エンジニアに人気があります。
- Sysmac Studio(オムロン): 高度なモーション制御などで使われます。
② タッチパネル作画ソフト(HMI)
PLCとセットで必須なのが、「操作画面」を作るソフトです。これもメーカーごとに異なります。
- GT Designer3(三菱電機): 三菱のタッチパネル(GOT)用。
- VT STUDIO(キーエンス): キーエンスのタッチパネル(VT)用。
★オムロンの場合(Sysmac Studio) オムロンの統合開発環境「Sysmac Studio」なら、PLC設計とタッチパネル作画がひとつのソフトで完結します。メーカーによって構成が違うので注意しましょう。
③ Excel(Microsoft)
「設計なのにExcel?」と思うかもしれません。しかし、実務の半分はExcelです。
- 部品表(BOM)の作成
- I/O割付表の管理
- タッチパネルのアラームリスト作成
関数やショートカットキーを使いこなせるかどうかで、設計スピードが決まります。
④CADソフト(AutoCAD / ECADなど)
図面を書くツールです。最初は「線の引き方」よりも「他人の図面のコピペ(流用設計)」を覚えましょう。ゼロから書くより、完成品から学ぶほうが100倍早いです。
3. 【神グッズ】持っていると「デキる」と思われるアイテム
最後に、必須ではないけれど「あると劇的に便利」なアイテムを紹介します。
① マグネット付きLEDライト
制御盤の中は意外と暗いです。 盤の壁面に磁石でパチっと貼り付けられるライト(ジェントスなどのバータイプ推奨)があると、両手がフリーになり、作業効率が爆上がりします。スマホのライトで作業するのは卒業しましょう。
② マスキングテープ(書き込み用)
配線を外すとき、何もせずに外すと「あれ? これどこに繋がってたっけ?」と詰みます。 外す前にテープを巻き、「24V」「0V」と油性ペンで書いておく。この一手間ができる新人は信頼されます。現場では「カモ井(カモ井加工紙)」のものが圧倒的なシェアを誇ります。特に、文字が見やすい「白」を選ぶのが鉄則です。
③ 高機能インソール(中敷き)
「安全靴は指定のものしか履けない(支給品)」という現場の場合、足の疲れは死活問題です。 そんな時は、インソールだけ自分のものに変えてしまいましょう。
おすすめ:BMZ インソール コンプリートプロ(自衛隊モデル)
- 「支給品の安全靴が痛い」という悩みへの最終回答がこれです。
- 陸上自衛隊の行軍(長距離移動)のために開発された、ガチのプロ仕様。単なるクッションではなく、「足のアーチ(骨格)」を支える構造になっており、一日中立ちっぱなしの現場でも、翌日に疲れを持ち越しません。
まとめ:準備不足は「やる気不足」と見なされる
たかが道具、されど道具。 「ドライバー貸してください」「テスター忘れました」 これを繰り返していると、いつまで経っても「教えてもらうだけのお客様」扱いから抜け出せません。
自分の道具を揃えることは、「今日から一人のプロとして仕事をする」という決意表明です。 まずは今回紹介した「三種の神器」を揃え、万全の状態で現場に向かってください。
あなたのエンジニアライフが、良いスタートを切れることを応援しています。