黒背景の赤文字が読めない?現場の20人に1人が抱える色覚の恐怖

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現場で戦える知識を、体系的にまとめました。

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タッチパネルの画面を作る時、背景色を「黒」にしていませんか? そして、アラーム履歴などで「黒い背景」に「赤い文字」を表示させていませんか?

実は、私は昔から、この「黒背景の赤」が妙に見にくいと感じていました。 「モニターの輝度が低いのかな?」「工場の照明の反射かな?」 なんとなくそう思って、目をこらして読んでいました。

……違いました。私の「目」の仕様だったのです。

私はFAエンジニアとして現場を9年見てきましたが、色彩検定UC級(色のユニバーサルデザイン)を取得して初めて、自分が「赤色を感じにくい」という色覚特性を持っていることを知ったのです。 (専門的には「1型色覚(P型)」に近い特性と言われます)

今回は、私が身をもって知った「FA現場の残酷な色覚の真実」を解説します。 この記事を読めば、あなたの作る画面は「誰にでも確実に見える」ようになり、部下や協力会社を重大な誤操作事故から守れるようになります。

結論から言うと、男性の5%(P型/D型色覚)にとって、赤色は『暗い色(黒)』として認識されます。これは目のハードウェア仕様の違いなのです。

特に、あなたが「目立つはず」と信じている「黒背景に赤文字」のアラーム。 私には、文字が背景の闇に溶け込んでしまい、そこに文字があることすら認識できません。 なぜ「赤」が「黒」になってしまうのか? その「目のメカニズム」と「解決策」を知らないまま設計するのは、あまりに危険です。

目次

なぜ、私の目には「赤」が暗く見えるのか?

私が色覚の仕組みを学んだ公式テキストはこちら。

▼私が「自分の目の正体」を初めて理解できた教科書

専門的な医学書ではなく、図解が多くてエンジニアにも分かりやすい内容でした。

  • 黒背景の赤文字が、闇に沈んで読めない
  • 「黄色」と「黄緑色」のランプの違いが、直感的に分からない

もし、これを読んでいるあなたが「あ、分かるかも」と思ったなら、今回の記事はあなたのためのものです。 そして「俺は全部ハッキリ見えるよ」というあなた。あなたの部下や協力会社のスタッフは、私と同じように「見えない恐怖」と戦いながら、何も言えずに作業しているかもしれません。

今回は、私が身をもって知った「FA現場の残酷な色覚の真実」を解説します。この記事を読めば、あなたの作る画面は「誰にでも確実に見える」ようになり、部下や協力会社を重大な誤操作事故から守れるようになります。


【統計】「20人に1人」の衝撃(クラスに1人は必ずいた)

まず、客観的なデータを見てください。

日本における色覚異常(色覚特性)の統計イラスト。日本人男性の約5%(20人に1人)、女性の約0.2%が該当し、20人の男性作業員が並んでいる中に1人の色覚特性者が含まれる確率的な頻度を可視化した図。
図:日本人の色覚特性の割合(数値は色彩検定公式テキストより引用)

日本人男性の約5%(20人に1人)は、一般色覚とは異なる色の見え方をする「色覚特性(色覚多様性)」を持っています。 (女性は0.2%と低いですが、男性比率の高いFA現場では、この「5%」という数字は極めて重い意味を持ちます)

工場の班に1人は必ずいる計算

「ウチの工場にはそんな人はいないよ」 そう思うのは、彼らが言い出せない(あるいは私のように自覚していない)だけです 小学校のクラス(男子20人)に1人はいた計算になります。あなたの部下、協力会社の配線作業員、そして客先の担当者……。 20人のチームがいれば、確率論的に必ず1人は私のような「色の見え方が違う人」が含まれているのです。


なぜ「黄色」と「黄緑」を間違えるのか?(錐体のメカニズム)

なぜ見え方が違うのか。これは「目のセンサー(ハードウェア)」の仕様違いです。

人間の網膜には、RGB(赤・緑・青)を感じる3つのセンサー(錐体)があります。

人間の網膜における色覚メカニズムの図解。L錐体(赤)、M錐体(緑)、S錐体(青)の3種類の視細胞(センサー)が光を感じ取る様子を描き、L錐体の感度が弱い場合に赤色が暗く見えたり、緑と区別がつかなくなる医学的な理由を解説。
図:網膜と錐体の構造イメージ
  • L錐体(赤を感じる)
  • M錐体(緑を感じる)
  • S錐体(青を感じる)

私のようなタイプ(P型/1型色覚)は、このうち「L錐体(赤)」の感度が弱い、あるいは欠損しています。 赤成分を感じ取る力が弱いため、脳内で以下のバグが起きます。

① 「黒背景の赤」が消える理由

赤センサーが弱い=「赤色の光」をあまり感じ取れないということです。 結果、鮮やかな赤色が「非常に暗い色(黒に近い色)」として認識されます。 黒い背景の上に、黒く見える文字が乗る。だから、文字が背景に溶け込んで「読めない」のです。

② 「黄色」と「黄緑」が同じに見える理由

光の三原色で言えば、「黄色」は「赤+緑」で作られます。 しかし、ここから「赤」成分を引くとどうなるか? 「黄色(赤+緑) - 赤 = 緑」 つまり、脳内では「黄色」も「黄緑」も、どちらも「ただの緑っぽい色」として処理されてしまうのです。

タッチパネルで「注意(黄)」と「安全(黄緑)」を色だけで使い分けている画面。 私には、それが「同じ色のボタン」にしか見えません。

現場で起きる「致命的なバグ」

我々が設計する制御盤では、「赤=異常」「緑=正常」という対比を多用します。 しかし、このような方にとっては、この2色は「どちらも同じような黄色〜茶色っぽい色」に見えています。

つまり、「異常(赤)」が出ても、「正常(緑)」との色の違いに気づけない可能性があるのです。これはヒューマンエラーではなく、設計上の欠陥です。


【加齢】ベテランの目は「サングラス」をかけている

「自分は若いし、色覚も正常だから関係ない」 そう思ったあなた。将来、必ずあなたも「見えなく」なります。

人間の目は、加齢とともに水晶体が黄色く濁っていきます(黄変)。

これは、例えるなら「常に黄色いサングラスをかけて生活している」のと同じ状態です。

黄色いフィルターを通すと、「青色」の光はカットされて暗くなります。 最近のおしゃれな装置で、やたらと「青色LED」を使っていませんか? ベテランの熟練工にとって、その青色ランプは「暗くて点灯しているのか分からない黒い点」に見えているかもしれません。

「最近の盤は見にくい!」と怒るベテランがいたら、それは単なるワガママではなく、あなたの選定した色が「加齢対応」できていない証拠なのです。


【実験】今すぐスマホを取り出してください

ここで、シミュレーション画像をお見せしようと思いましたが、やめました。 モニター越しの画像ではなく、あなたの目の前にある「本物の制御盤」で確認してほしいからです。

色覚特性を持つ私たちが、世界をどう見ているか。 これを擬似体験できる無料のスマホアプリがあります。

  • 色のシミュレータ(Chromatic Vision Simulator)

今すぐこのアプリをインストールし、カメラを起動して、ご自身の工場の「赤ランプ」と「緑ランプ」を映してみてください。

衝撃を受けるはずです。

「C型(一般)」で見えている鮮やかな赤と緑が、「P型」や「D型」のフィルターを通すと、驚くほど似たような「くすんだ黄色(黄土色)」に変わりませんか?

【注意】「見えている」のではなく「推測している」だけ

アプリを見て、「あれ? 意外と赤と緑の違い、分かるぞ?」と感じた方がいるかもしれません。 それは色(色相)の違いではなく、「明るさ(輝度)」の差を見ている可能性があります。

私自身もそうですが、色の違いが分からない時は、無意識に「暗い方が赤、明るい方が緑」と、明るさで推測して生きています。

しかし、これはFAでは危険です。

  • もし、LEDが劣化して輝度が落ちたら?
  • もし、現場の照明の当たり方が変わったら?

頼りにしていた「明るさの差」がなくなった瞬間、私たちは判断材料を失い、スイッチを押し間違えます。 「条件が良ければ見える」は、安全設計の世界では「見えない」と同じです。


まとめ:その配色は「優しさ」以前の問題だ

「色弱の人に配慮しましょう」 そんな福祉のような話をしているのではありません。

  • 20人に1人の現役世代(私のような人間)
  • 現場を支える高齢のベテラン

この両方が見間違える可能性のある画面を放置するのは、「設計上の欠陥(バグ)」であり、安全配慮義務違反のリスクすらあります。

「じゃあ、何色なら全員に見えるんだ!」 「黒背景じゃなかったら、何色にすればいいんだ!」

安心してください。色彩検定UC級では、「誰にでも識別しやすい色の組み合わせ(ユニバーサルカラー)」が定義されています。現場の安全対策として、手元に置いておきたい一冊は以下です。

▼「誰にでも見える色の組み合わせ」が載っている公式ガイド
配色で揉めた時に「この本に書いてあるから」と言えば一発で通ります。設計室に1冊置いておくべき「安全設計のバイブル」です。

次回は【実践編】として、

  • 「黒背景」をやめて、何色にすべきか
  • そのまま使える「最強のRGB設定値」

を公開します。 HMIの背景色を「黒」にしている人、次回までにその設定画面を開いておいてください。修正することになりますから。

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「FA現場のHMI設計」完全マニュアル(全4回)

「私にはセンスがないから」と画面設計を諦めていませんか? 本連載では、センス不要の「ロジック(理論)」と、20人に1人の色覚バリアフリーを解決する「ユニバーサルデザイン」の世界を解説します。

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