インターロックで現場を守れ!フェールセーフとフールプルーフ3つの必須知識【機械安全③】

  • URLをコピーしました!
\ 迷子にならないための地図 /

未経験から一人前への
「最短ルート」公開中

独学で「何から勉強すれば…?」と悩んでいませんか?
現場で戦える知識を、体系的にまとめました。

FA電気設計ロードマップを見る

「リスクが高いから安全柵(ガード)を付けよう」 そう決まった時、具体的にどんな回路を組めばいいか自信を持って答えられますか?

ただ「ドアスイッチ」を付けるだけでは不十分です。もしその配線が断線したり、スイッチが壊れたりしたらどうなるでしょうか? 最悪の場合、扉を開けても機械が止まらず、死亡事故につながるリスクがあります。

この記事では、実務9年の現場エンジニアが、実際の現場で運用されている「絶対に事故を起こさない安全設計」の実体験をもとに解説します。

今回は、安全回路の基本「インターロック」と、絶対に覚えておくべき2つの設計思想「フェールセーフ」「フールプルーフ」について解説します。

結論から言うと、電気屋の仕事は「柵」を作ることではなく、「開けたら・壊れたら、絶対に止まる仕組み(インターロック)」を作ることです。

ただし、どんなに高価なスイッチを付けても、作業員がポケットに隠し持った「予備キー」を差し込めば一瞬で無効化されてしまいます。この「ズル」を技術的に防ぐ方法を知らないと、あなたの安全設計は全て水の泡になります。


目次

電気屋の最強武器「インターロック」とは?

リスクアセスメント(3ステップメソッド)のStep 2「安全防護」において、最も重要なのがガード(柵)です。 ガードには大きく分けて2種類あります。

▼固定式と可動式、どっちを使う?

ガードの種類特徴主な用途(場所)安全対策の要否
固定式ガードボルトや溶接で固定。
工具がないと外せない。
滅多に開けない場所
(駆動ベルト、チェーン、点検口など)
インターロック不要
(工具が必要なため)
可動式ガード扉やスライド式。
工具なしで開けられる。
頻繁に作業する場所
(ワークの脱着、段取り替えエリア)
インターロック必須
(開けたら止まる仕組み)

「可動式」には監視が必要

固定式ガードなら「開かない」ので安全ですが、可動式ガードは作業中に誰かが開けてしまうかもしれません。 そこで必要になるのが「インターロック装置(Interlocking device)」です。

  • ガードが開いている間は、機械が動かない(起動ロック)。
  • 機械が動いている間は、ガードが開かない(ガードロック)。
  • 運転中にガードを開けたら、即座に停止指令を出す。

この「ガード(メカ)」と「制御システム(エレキ)」を連動させる仕組みこそが、インターロックです。ここで初めて、ドアスイッチやライトカーテンといった「安全機器」が登場するのです。

可動式ガード(安全柵)におけるインターロックの仕組み図解。扉が開くことでドアスイッチの接点が離れ、信号がOFFになり、制御盤経由でモーターの出力が遮断されて機械が停止する一連の流れ。

機械は壊れる前提で組め(フェールセーフ)

安全回路を組む時、絶対に守らなければならない鉄則があります。 それが「フェールセーフ(Fail-safe)」です。

壊れたら「安全側」に止まる

機械や部品はいつか必ず壊れます。電線は切れます。 フェールセーフとは、「部品が故障したり、エネルギーが遮断された時、必ず安全な状態に移行する」という設計思想です。

分かりやすい例が、工業炉などに使われる「燃焼装置の安全遮断弁(電磁弁)」です。

燃焼装置における安全遮断弁(電磁弁)のフェールセーフ構造図。通常時は電気で弁を開いているが、断線や停電で電気が切れた際は、内蔵バネの力で物理的に弁が閉まり、ガス漏れを防ぐ「安全側に故障する」仕組みの解説。
安全遮断弁の動作イメージ図

▼どっちが安全?遮断弁の設計

設計動作停電・断線した時判定
悪い設計通電すると「閉まる」弁が開く
(ガス漏れ発生!)
フェールセーフ通電中だけ「開く」弁が閉まる
(ガス遮断で安全)
⭕️

※電気が切れたら「バネの力」で勝手に閉まる構造を選びましょう。

電気回路での応用

非常停止ボタンが「B接点(常時閉)」なのもこの理由です。 もしA接点(押すとON)で設計していたら、いざという時に「断線していて信号が送れない!」という事態になります。 B接点なら、断線した瞬間に「OFF(停止)」信号が出るため、機械は止まります。「故障=停止=安全」が成立するのです。


人間は間違える前提で組め(フールプルーフ)

もう一つの鉄則が「フールプルーフ(Fool-proof)」です。 直訳すると「愚か者(Fool)でも耐えられる(Proof)」、つまり「人間がミスをしたり、知識がなくても事故にならない設計」のことです。

  • 電池を逆向きに入れられない形状にする。
  • 電子レンジはドアを閉めないと動かない。
  • プレスの起動ボタンを「両手押し」にして、手を挟めないようにする。

「無効化(ズル)」との戦い

現場では、作業効率を上げるために安全装置を「無効化(Defeat)」しようとする人が必ず現れます。 第1回で紹介した「テープでボタンを固定する」や「ドアスイッチのキーだけ差しっぱなしにする」といった行為です。

これに対抗するのも設計者の仕事です。

▼ 現場の「ズル」に勝つための対策

  • RFID式スイッチ: 予備キーやドライバーでは騙せない仕組みにする
  • 非接触化: 磁気センサーなどで「テープ固定」を無効化する
  • 物理的配置: 手が届かない高い位置にセンサーを設置する

「使う人が悪い」と責めるのではなく、「ズルができない構造」を作ることが、究極のフールプルーフと言えます。

安全スイッチの無効化(ズル)防止対策の比較図。左側は予備キーなどで簡単に無効化できてしまう一般的なカギ型スイッチ(NG例)。右側は専用のペアリングコード以外には反応せず、不正解除を防ぐRFIDコード化安全スイッチ(OK例)。
「一般的なスイッチ」と「対策済みスイッチ」の対比

まとめ:安全設計は「愛」である

全3回にわたって「機械安全」について解説してきました。

  1. 概念: 安全とはリスク計算であり、絶対安全はない。
  2. 計算: 危険源を見つけ、点数化して評価する。
  3. 設計: インターロックとフェールセーフで、故障やミスから人を守る。

一見、面倒なルールや計算ばかりに見えますが、その根底にあるのは「現場で働く人を誰も怪我させたくない」という、設計者の愛(と責任)です。 警告シール一枚で済まさず、知恵と技術で人を守れるエンジニアを目指しましょう!

安全設計マスターへの道(全7回ロードマップ)

「機械安全・機能安全シリーズ」は、以下の全7回構成でお届けします。「安全設計」は、概念、計算、ハードウェア、制御、そして法律が複雑に絡み合う総力戦です。

このシリーズを最後まで読めば、あなたはもう「ISO? 計算? よく分からんからメーカー任せ」と言っていた頃のあなたではありません。

自信を持ってリスクを計算し、仕様を決定し、堂々と「安全です」と言い切れるエンジニアになれるよう、体系的に解説していきます!

Phase 1:機械安全編(メカ・構造で守る)

まずは「物理的にどう守るか?」という機械安全の基礎を固めました。

💬 更新情報を X (Twitter) で発信中!

記事の更新通知や、現場で役立つ「電気制御の小ネタ」をツイートしています。 また、「記事のここが分からなかった」「現場でここが困っているけどどうしたらいい?」といった疑問があれば、DMで募集しています!個別のトラブル相談も、ブログのネタにさせていただけるなら大歓迎です!ぜひフォローして気軽に絡んでください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次