1万ボルトの静電気が平気で、100ボルトの感電が致命的な理由

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「電圧が高い=危険」だと思っていませんか? 実はこれ、半分正解で、半分間違いです。

例えば、冬場にドアノブに触れて「バチッ!」となる静電気。 あれ、実は3,000ボルト〜1万ボルトもあります。でも、私たちは「痛っ!」と言うだけで、死にはしませんよね。

一方で、家庭用のコンセントはたったの100ボルト。ですが、感電すると命に関わる重大な事故になります。

なぜ「1万ボルト」は平気で、「100ボルト」はヤバイのか? この違いを正しく理解していないと、現場で「見えない感電」に遭い、最悪の場合命を落とすことになります。

そこで本記事では、実務9年の現役電気設計者が、見えない電気の恐怖を「水」に例えて解明します。

結論から言うと、人体へのダメージの正体は「電圧(高さ)」ではなく、「電流(水量)」です。

ただし、工場にあるような「高圧設備(6600V)」だけは例外です。 これらは電圧が高すぎるため、近づいただけで「触らなくても感電する」という恐怖の現象を引き起こします。


目次

「そもそも、電圧と電流って何?」という方へ

関係がいまいちピンとこない方は、まずはこちらの記事をチェックしてみてください。電気の基本を「水の流れ」に例えて解説しています。

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電気なんて怖くない!「水」で直感理解するオームの法則と3大要素 「電圧・電流・抵抗」の違い、説明できますか?電気は目に見えませんが、「水」に例えると驚くほど直感的に理解できます。「電圧=水圧」「電流=水量」「抵抗=ホースの詰まり」。難しい数式は一切なし!電気設計の基礎となる3要素のイメージを、水遊び感覚でマスターしましょう。

人体へのダメージの正体は「電流」

結論から言うと、感電死の直接の原因は、電圧(押す力)ではなく、体の中を流れた電流(流れる量)です。

心臓は弱い電気信号で動いているので、外から大きな電流が流れると、心臓の動きが阻害されてしまうのです。

これを「水」でイメージすると一発で分かります。

① 静電気(1万ボルト)=「上空から落ちてくる『水滴』」

静電気は、電圧(高さ)はスカイツリー並みに高いです。

しかし、そこにある水(電流)の量は、ほんの一滴しかありません。

  • 結果: 高い所から落ちてくるので当たると「痛い(バチッ)」ですが、水量が少なすぎて溺れることはありません。

② コンセント(100ボルト)=「無尽蔵の放水」

コンセントは、電圧(高さ)は家の2階くらいです。

しかし、その奥には発電所という巨大なダムが繋がっており、水(電流)が無制限に供給されます。

  • 結果: 水圧はそこそこでも、太いホースで大量の水を浴びせられ続けるため、溺れてしまいます(=心臓停止)。
電圧と電流の関係を水の流れに例えた図解。左側は静電気(1万V)を「高さはあるが水滴一粒」として痛いだけで済む様子。右側はコンセント(100V)を「高さはそこそこだが激流(無尽蔵の放水)」として、溺れてしまう(=感電死する)危険な様子を対比。

つまり、「電圧は『痛み』、電流は『ダメージ』」と覚えると分かりやすいです。


じゃあ「高圧(6600V)」はなぜ危険なの?

「電流が原因なら、電圧が高くても電流が少なければいいんでしょ?」

そう思いますよね。でも、ここに「オームの法則」という物理の壁が立ちはだかります。

人間の体は電気を通しにくい「抵抗(R)」ですが、電圧(V)が高すぎると、無理やり大量の電流(I)を押し込まれてしまうのです。

実際に計算してみましょう。(※人体の抵抗を2000Ωと仮定)

ケースA:100Vに触れた場合

オームの法則を用いた感電電流の計算式(ケースA)。電圧100Vを人体抵抗2000Ωで割ると、電流は0.05A(50mA)となり、心臓に影響が出る危険ラインに達することを示す数式。
  • 状態: 「ビリビリッ!」と激痛が走り、動けなくなるレベル。非常に危険ですが、短時間で離れられれば助かる可能性があります。(※50mAは心臓に影響が出る危険ラインです)

ケースB:6600V(工場の受電設備)に触れた場合

オームの法則を用いた高圧感電の計算式(ケースB)。電圧6600V(工場の受電設備)を人体抵抗2000Ωで割ると、電流は3.3A(3300mA)となり、致死量を遥かに超える電流が一瞬で流れることを示す数式。
感電時の電圧による人体への影響比較。100Vは「動けなくなる激痛」だが運が良ければ助かる。対して高圧6600Vは「体が内側から焼ける」ほどのエネルギーがあり、即死レベルの33倍もの電流が流れる危険性を警告するイラスト。
  • 状態: 致命的なライン(0.1A)の33倍もの電流が一瞬で体を貫通します。
  • イメージ: 強力な高圧洗浄機を口の中に突っ込まれて発射されるようなものです。体の内部が損傷し、極めて危険な状態になります。

これが、高圧設備が「絶対に触れてはいけない」理由です。

【恐怖】なぜ「15mA」で逃げられなくなるのか?

電流の強さと人体への影響(目安)

電流の大きさ症状危険度
1 mAビリッと感じる(感知電流)注意
5 mA痛みを伴う電撃警告
10〜20 mA【魔の領域】筋肉が固まり、自力で離れられなくなる(離脱電流)危険
30 mA呼吸困難、心室細動(心臓が痙攣する)の可能性極めて危険
50 mA〜短時間でも心停止に至る可能性が高い致命的

「たかが0.015アンペア(15mA)でしょ?」と思うかもしれません。 しかし、人間の筋肉は電気信号で動いています。外部から10〜20mAの電流が流れると、筋肉が強制的に収縮して固まってしまいます。

もし手で電線を握って感電した場合、筋肉が収縮して「握り込んで」しまい、自分の意思で手を離すことができなくなります。 そのまま電流が流れ続け、やがて30mA、50mAとダメージが進行してしまう……これが感電事故の最も恐ろしいパターンです。

家庭用の漏電ブレーカーが「30mA」で作動するように作られているのは、この「心室細動」が起きる危険ラインの手前で電気を遮断し、命を守るためなのです。


本当の恐怖。「触らなくても」感電する

最後に、高圧電気(特別高圧など)の本当の怖さをお伝えします。

電圧があまりに高すぎると、「触れなくても」感電します。

これを「絶縁破壊(アーク放電)」と呼びます。

高圧電気設備の絶縁破壊(アーク放電)のイラスト。作業員が「触ってないのに!」と叫びながら、離れた場所にある変圧器から飛んできた電気(アーク)によって感電する様子。高圧は近づくだけでアウトになる危険性を表現。

普通の水道(100V)は、蛇口に口を付けないと水は飲めません。

しかし、超高圧の水流(数千ボルト)は、蛇口に近づいただけで、水が空気を切り裂いて「バシューッ!」と噴き出してくるのです。

だから、電気のプロは口を酸っぱくしてこう言います。

「高圧には触るな。近づくな。」

まとめ:安全の境界線「42V」

業界には「死にボルト(42V)」という言葉があります。

42Vを超えると、電気の圧力が皮膚のバリアを突破しやすくなり、感電死のリスクが跳ね上がります。

  • 静電気(1万V): 水量が少ないからセーフ。
  • コンセント(100V): 水量が多いからアウト。
  • 高圧(6600V): 水圧も水量も最強だから、近づいただけでアウト。

「見えない電気」を正しく恐れて、安全第一で作業しましょう!

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【コラム】1万ボルトの静電気は平気で、100ボルトのコンセントで危険なのはなぜ? スカイツリーの高さから落ちる一滴(静電気)と、家の高さからの大量の放水(コンセント)をイラストで比較し、電圧と電流の関係を解説。

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