制御盤の設計や、現場での改造工事。「このモーター、何sqの電線を使えばいいんだっけ?」といちいち計算するのは面倒ですよね。
この記事では、現場で最もよく使う「KIV / IV線(600Vビニル絶縁電線)」の許容電流と、選定すべきブレーカー容量をまとめました。
⚠️ この表の「前提条件」について(重要)
ネットに落ちている一般的な表(30℃・空中配線)は、制御盤の中では「甘すぎて危険」です。 本記事の表は、現場基準に合わせて以下の厳しい条件で算出しています。
- 周囲温度: 40℃(熱がこもる盤内を想定)
- 配線方法: ダクト格納(放熱が悪い状態)
- 安全係数: カタログ値 × 0.5(電流減少係数)
「カタログ値(2sq=27A)と全然違う!」と思った方。 それはカタログが「理想環境」だからです。盤内でカタログ値を信じると火災の原因になります。
なぜ「係数0.5」なのか?なぜカタログ値ではダメなのか? その「衝撃の根拠」と「計算ロジック」は、こちらの記事で詳しく解説しています。

迷ったら、安全側に倒した以下の表に従ってください。
制御回路・小容量(0.5sq 〜 2.0sq)
センサー電源や、小さなモーター、制御電源などはここを見ればOKです。
| サイズ / 用途 | カタログ値 (30℃・空中) | 現場の許容電流 (40℃・ダクト) ※係数0.5適用 | 推奨ブレーカー |
| 0.5 sq /センサー・リレー | 12 A | ➡ 6 A | 5 A |
| 0.75 sq /ソレノイド・表示灯 | 15 A | ➡ 7.5 A | 5~10 A |
| 1.25 sq /制御電源・AC100V | 19 A | ➡ 9.5 A | 10 A |
| 2.0 sq /コンセント・PC用 | 27 A | ➡ 13.5 A | 10~15 A |
🛑 ここがポイント!
- 「ニスケ(2sq)には20Aブレーカー」はNGです!ダクト内では2sqは13.5Aまでしか保証できません。20A流すと過熱します。必ず15A以下のブレーカーを選定するか、電線を3.5sqに上げてください。
動力回路・中容量(3.5sq 〜 14sq)
ここからは三相モーターなどの動力系です。
| サイズ / 用途 | カタログ値 (30℃・空中) | 現場の許容電流 (40℃・ダクト) ※係数0.5適用 | 推奨ブレーカー |
| 3.5 sq /小型ファン・ポンプ | 37 A | ➡ 18.5 A | 15~20 A |
| 5.5 sq /3.7kW以下のモーター | 49 A | ➡ 24.5 A | 20~30 A |
| 8.0 sq /5.5kW以下のモーター | 61 A | ➡ 30.5 A | 30 A |
| 14 sq /一次側電源など | 88 A | ➡ 44 A | 40~50 A |
🛑 ここがポイント!
- 5.5sqでブレーカー定格30Aは「ギリギリ」です。例えば28A流れるとするとブレーカーは落ちないのに電線が過熱します。定格30Aフルに流し続けるような回路では、安全を見て8sqに上げるのがプロの選択です。
【重要】なぜ「5.5sqに30A」は危険なのか?(保護協調の逆転)
この表を見て、「あれ? 普段5.5sqに30Aのブレーカーを使ってるけど…」と思った方もいるかもしれません。 実はそれ、「条件によっては燃える」非常に危険な組み合わせです。
その理由を、電気設計で最も恐ろしい「保護協調の逆転現象」で解説します。
1. ブレーカーが電線を守れない!
先ほどの「現場の安全係数(0.5)」で計算してみましょう。
- 5.5sqの限界(盤内): 24.5 A
- ブレーカー容量: 30 A
もし、この回路に「28A」の電流が流れ続けたらどうなるでしょうか?
- ブレーカー(30A): 「まだ30A行ってないから正常だね!」と電気を通し続けます(落ちません)。
- 電線(限界24.5A): 「熱い!限界超えてる!」と発熱し、被覆が溶け始めます。
- 結果: ブレーカーが落ちる前に、電線から煙が出るか発火します。
これが「保護協調が取れていない(逆転している)」状態です。
2. なぜ現場ではよく見かけるの?
「でも、メーカーの制御盤でも5.5sqに30Aが付いていることあるよ?」 それは、「負荷の性質」を理解した上で、限定的に使っているからです。
- ⭕️ プロがやる限定ケース(モーター負荷など)
- 「普段は15Aしか流れないが、起動した瞬間だけドカンと電流が流れる」ような場合。
- 平均すれば電線の限界を超えないため、許容されます。
- ❌ やってはいけないケース(ヒーター・一次側など)
- 「ずっと25A〜28A流れっぱなし」という場合。
- これは完全にアウトです。電線が焦げます。
3. 迷ったら「8sq」が正解
いちいち「これはモーターだから…」と考えるのがリスクなら、最初から8sqを選定してください。
- 8sqの限界(盤内): 30.5 A
- ブレーカー容量: 30 A
これなら「電線の限界 > ブレーカー」となり、万が一31A流れても、電線が燃える前にブレーカーが確実に遮断してくれます。
⚠️ 注意点
- 盤内温度が50℃を超える場合:ファンが壊れている、夏場の屋外盤など、過酷な環境ではこの表でも危険です。さらにワンサイズ太い電線を選んでください。
- HIV線(耐熱電線)の場合:許容電流が上がりますが、ブレーカー容量(端子台の定格)がボトルネックになることが多いので、基本的にはこの表(KIV基準)に合わせておくと間違いありません。
