【DC24V電源】容量だけで選ぶな!「ピーク負荷・熱・トランスレス」で差がつく選定の常識

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制御盤の設計をする時、DC24Vパワーサプライ(スイッチング電源)をどうやって選んでいますか?

「必要なのは5Aだから、カタログで120Wの機種を選べばOKでしょ?」

もしその選び方をしているなら、将来的に盤内でトラブルが起きる確率が高いです。

実はパワーサプライは、カタログの「容量(W数)」だけでは見えない重要なスペックが隠れています。

今回は、初心者が陥りがちな選定ミスと、現場のエンジニアが実践している「トランスレス活用」や「隠れスペック」の読み解き方を徹底解説します。


目次

【前提】なぜ今まで「トランス」が必要だったのか?

本題の選定に入る前に、少しだけ「法律(規格)」の話をさせてください。

皆さんの工場の制御盤、DC24V電源の前段に「制御トランス(ダウントランス)」が入っていませんか?

「200V入力対応の電源なら、直接つなげばいいのに。なんでわざわざ重いトランスを置くの?」と思ったことがあるはずです。

犯人は「IEC 60204-1(機械安全)」

実はこれ、設計者の趣味ではなく、国際規格(IEC 60204-1 / JIS B 9960-1)のルールだからです。

「制御回路には、変圧器(トランス)を介して電源を供給しなければならない」

制御回路を主回路から電気的に切り離し、漏電時の地絡電流を制限したり、誤動作を防いだりするために、これまでは「トランス設置が必須義務」でした。だから、どんなに邪魔でも発熱しても、トランスを置くしかなかったのです。


究極のコストダウン「トランスレス」電源とは?

しかし最近、この常識を覆す製品が登場しています。

それが、「IEC 61558-2-16」という規格に対応したトランスを内蔵しているパワーサプライです。

「電源自体がトランス」とみなされる

この規格(IEC 61558-2-16)に適合したトランスを採用し、かつOVCⅢ(過電圧カテゴリ3)に対応している製品を選ぶと、なんと電源そのものが「絶縁トランス」としての役割を果たしていると認められます。

つまり、外付けの制御トランスを撤去しても、機械安全規格(IEC 60204-1)をクリアできるのです。

  • メリット大: 重い・熱い・場所を取るトランスを盤から排除できる。
  • コスト減: トランス代+配線工数+スペース代が丸ごと浮く。
  • 3相入力がOKなものも: オムロンの「S8VK-WA」シリーズなどは、工場の動力(3相200V/400V)を直接ドンと入力してDC24Vを作れます。

【注意】

すべてのスイッチング電源が対応しているわけではありません。安価な汎用モデルは非対応の場合が多いので、必ずカタログの適合規格欄をチェックしてください。


【容量選定の罠】その電源、一瞬落ちてない?

ここからは、具体的なスペック選定の落とし穴です。

一番多いトラブルが、「容量は足りているはずなのに、装置が動くとPLCの電源が落ちる(再起動する)」という現象です。

原因は「ピーク電流」

モーターやソレノイドバルブなどの負荷は、動き出しの瞬間に定常時の数倍の電流(突入電流)を食います。

  • 汎用電源の場合: 一瞬でも定格(例:5A)を超えると、過電流保護が働いて電圧をシャットダウン(垂下)させます。これがPLCの再起動を引き起こします。
  • ピーク対応電源の場合: 数秒間であれば、定格の150%〜200%(例:10A)を出せる余力があります。

トランスの選定と同様、カタログの「ピーク電流対応」の有無を必ず確認しましょう。特にモーター負荷がある場合は必須です。


【熱対策】夏場は「5A」出ません(ディレーティング)

次に怖いのが「熱」です。

スイッチング電源の寿命部品(電解コンデンサ)は熱に非常に弱く、「10℃2倍則(周囲温度が10℃上がると寿命は半分になる)」という法則があります。

50℃を超えると能力ダウン

カタログの「ディレーティングカーブ(出力特性図)」を見てください。多くの電源は、周囲温度が50℃や60℃を超えると、出力可能な電流値がガクンと下がります(80%など)。

  • 冬の試運転(20℃)では動いていたのに、真夏の工場(盤内50℃)で過負荷エラーが出るのはこれが原因です。
  • 取り付け方向: 「横向き」や「上向き」に取り付けると放熱効率が悪くなり、さらに定格が下がることがあります。基本は「標準取り付け(縦)」です。

【比較】S8FS-G vs S8VK-S どう使い分ける?

最後に、現場でよく使われるオムロン製品を例に、「目的別の使い分け」を紹介します。

スタンダードな「S8FS-G」と、コンパクトな「S8VK-S」。

価格や入手性は状況によりますが、「機能面」では明確な違いがあります。

選定ポイントS8FS-G (スタンダード)S8VK-S (高機能モデル)現場での意味
トランスレス対応 (IEC 61558-2-16)対応 (IEC 61558-2-16)どちらもトランス削除OK
設置スペース放熱の隙間が必要密着取付OKS8VK-Sなら詰めて並べられる
耐環境性なし (標準)基板コーティング (標準)埃・湿気に強い (重要)
端子台主にねじ端子プッシュイン標準増し締め不要で工数削減
おすすめコスト重視・標準盤省スペース・環境対策盤を小さくしたいならこっち

「S8VK-S」を選ぶべき3つの理由

① 圧倒的な「密着取付」の強み

S8FS-Gなどの一般的な電源は、放熱のために左右に10〜20mm程度のスペースを空ける必要があります。

一方、S8VK-Sは「隙間ゼロ」で横に並べてもOKな設計になっています。

もし電源を5個並べる場合、この「隙間」の有無だけで盤の幅が100mm近く変わってきます。盤のサイズランクを1つ下げてトータルコストを落としたい時、この機能が効いてきます。

② 「標準コーティング」という安心感

(カタログには目立って書かれていませんが標準装備です)

加工現場のオイルミストや、海外の多湿環境、盤内のホコリによるショートを防ぐには、基板コーティングが最強の保険です。他社やスタンダードモデルではオプション扱い(納期がかかる)ことが多い機能が、標準でついているのは大きなメリットです。

③「プッシュイン端子」で工数削減&緩みなし

S8FS-Gは「ねじ端子」が主流ですが、S8VK-Sは「プッシュイン(フェルール)端子」が標準です。 ねじ端子の場合、輸送中の振動でねじが緩むリスクがあるため、現場での「増し締め作業」が必須になります。一方、プッシュイン端子はバネ圧で固定するため、振動に強く、増し締めメンテナンスが不要になります。

「まだねじ端子で消耗してるの?」と思っている方は、ぜひ端子台の選び方の記事も参考にしてみてください。

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【Q&A】容量が足りない…「並列接続」していい?

Q. 手持ちの24V電源が2台あります。並列につないで容量を倍にしてもいいですか?

A. 「機種によります」。S8FS-Gのような汎用機はNGです。

スイッチング電源は、出力電圧に個体差があるため、ただ並列につなぐと電圧が高い方に負荷が集中して故障します。

  • S8FS-G(スタンダード機): 並列運転(容量倍増)は不可です。 (※ダイオードを入れて、片方が壊れても予備が動く「バックアップ運転」なら可能です)
  • S8VK-S(高機能機): 並列運転(容量倍増)が可能です。 内部でバランスを取る機能があるため、2台つないで「5A+5A=10A」として使えます。(※スイッチの切替など条件があるのでマニュアル必読)

「後から装置を改造して負荷が増えそう…」という予感があるなら、最初から並列可のS8VK-Sを選んでおくと、後で電源を買い直さずに済みます。

※直列運転(24V+24V=48V)について どちらの機種も「2台まで可能」ですが、「外付けダイオード」が必要になるケースが多いため、必ず仕様書通りの配線を行ってください。

【おまけ】「交換時期お知らせ機能」は課金すべき?

最後に、カタログを見ていて気になる機能「交換時期お知らせモニタ(寿命診断)」について。
オムロンの「S8VSシリーズ」や「S8VK-Xシリーズ」には、電源の寿命が尽きるまでの年数をデジタル表示したり、信号で出したりする機能があります。

「これって必要? ただの贅沢機能じゃない?」

迷うところですが、「止まると損害がデカい装置」なら、絶対に採用すべきです。

パワーサプライは「乾電池」と同じ

実はスイッチング電源は、内部の「電解コンデンサ」という部品が熱で乾いていくため、数年〜十数年で必ず寿命が来ます。
ある日突然、電源が入らなくなり、ラインが全停止。原因調査と交換で半日潰れる……という損失コストを考えれば、数千円高くなっても「あと1年で交換ですよ」と教えてくれる機能は安すぎる保険です。

客先の保全担当者からも「この盤、分かってるね!」と感謝されるポイントなので、重要設備にはぜひ検討してみてください。


まとめ:電源選定チェックリスト

「たかが電源」と侮ると、盤全体の設計品質に関わります。次回の選定では、以下のポイントをチェックしてみてください。

  1. トランスレス化: IEC 61558-2-16対応品を選び、トランスを廃止してコストダウンできないか?
  2. ピーク電流: モーター負荷がある場合、ピーク対応機種を選んだか?
  3. 温度環境: 盤内温度が高くなる場合、ディレーティング(10℃2倍則)を考慮して1ランク上の容量にしたか?
  4. 環境対策: 粉塵や湿気が多い現場なら、基板コーティングの機種を選んだか?

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