セーフティリレー選定の落とし穴4選!配線ミスで安全回路が無効になる?

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「安全回路、適当に組んでおいて」

上司にそう言われて、とりあえずオムロンやIDECのカタログにある「あの赤いリレー(セーフティリレーユニット)」をなんとなく選んでいませんか?

普通の制御機器なら、選定を間違えても「動かない」だけで済みます。しかし、安全機器の選定ミスは「止まらない(=怪我・死亡事故)」に直結します。特に初心者が陥りやすいのが、「配線のショート検知」や「リセット方式」の勘違いです。

現場でハードもソフトも担当する実務9年の私の経験から、カタログのスペック表だけでは見落としがちな「4つの落とし穴」と、正しい回路設計の鉄則を解説します。

この記事を読めば、なぜ「セーフティリレーユニット」が必要なのかが論理的に理解でき、自信を持って「この機械は安全です」と言い切れるようになります。

結論から言うと、非常停止ボタンは必ず指定された端子を使い、人が入れる設備なら必ず「手動リセット」を選定してください。

特に「非常停止ボタン」を「ライトカーテン」と同じように24V直結で配線するのは絶対にやめてください。 カタログの配線図は似ていますが、そのつなぎ方をすると「配線ショート検知」が無効になり、いざという時にボタンを押しても機械が止まらなくなります。

目次

なぜ高い?普通の汎用リレーとセーフティリレーの違い

そもそも、なぜ数百円のオムロンMYリレーではなく、数万円もする「セーフティリレーユニット」を使わなければならないのでしょうか?

答えは「壊れ方」の違いにあります。

汎用リレーが「溶着」すると地獄を見る

普通のリレー(汎用リレー)は、接点の開閉時に発生するアーク放電などで、接点が溶けてくっつくこと(溶着)があります。

もし「非常停止回路」に普通のリレーを使っていたらどうなるでしょうか?

  1. 作業者が非常停止ボタンを押す(コイル電源OFF)
  2. リレーの接点が溶着して離れない
  3. モーターへの動力電源が遮断されず、機械が止まらない

これが最悪のシナリオです。汎用リレーのバネの力では、溶接された接点を引き剥がすことはできません。

セーフティリレーは「安全側に壊れる」

そこで必須となるのがセーフティリレーユニットです。これには「強制ガイド接点」という特殊な構造のリレーが内蔵されています。

  • 多重化(冗長化):内部にリレーが複数あり、お互いに監視し合っている。
  • フェールセーフ:もし片方のリレーが溶着しても、もう片方が確実に回路を遮断する。さらに「故障したから次は再起動させない」というロック機能が働く。

「壊れても必ず止まる」。この機能を担保するために、あの赤い箱が必要なのです。


端子が多いのはなぜ?「2重化」と「クロスショート」の罠

非常停止ボタンには電源(P24)ではなく、「テスト出力」などの専用の端子(例: T11, Y1, S11など)を経由するよう描かれています。

「面倒だから電源(P24)から直接入れればいいや」と考える人もいるかもしれませんが、これは接点入力(スイッチ)の場合は絶対にNGです。

落とし穴① 「2重化」だけでは不十分?クロスショートの罠

安全回路の入力は「2系統(デュアル)」にするのが基本ですが、「ただ2本配線すればいい」わけではありません。

入力信号を2系統(デュアル)にするのは、片方の接点溶着などの「ズレ」を見抜くためです。 しかし、もしケーブルが挟まって被覆が破れ、「チャンネル1とチャンネル2の配線同士」がくっついてしまったら(クロスショート)どうなるでしょうか?

もし外部の24V電源を直接つないでいると、両方とも「24V」がかかっているだけなので、ショートしても電圧変化がなく、ユニットは正常だと勘違いしてしまいます。

② 専用端子は「ショートを検知する」ためにある

そこでセーフティリレーユニットは、指定された端子を使うことで、このショートを検知する仕組みを持っています。機種によって方式は異なりますが、目的は同じです。

  1. パルス方式(セーフティコントローラなど): 検検査用のパルス信号を出しています。線がショートして異なる信号が混ざると、それを「波形異常」として検知して停止します。
  2. 電源遮断方式(一般的なセーフティリレーユニットなど): チャンネル間に電位差(+極と-極など)を持たせています。線がショートすると物理的に電源短絡(ショート)が起き、内部の保護機能が働いて電源が落ちます。

どちらのタイプであっても、カタログ指定の「正規の出力端子」から配線しないと、この機能は働きません。

【重要】「ライトカーテン配線」の罠に注意!

これが今回もっとも伝えたい、最大の落とし穴です。

高機能なユニットのカタログには、「24Vの信号入力をそのまま受け付ける(ショート検知をしない)」配線モードが載っています。これは「ライトカーテン(セーフティセンサ)」を接続するためのモードです。これを非常停止ボタンで真似してはいけません。

  • ライトカーテン:センサ自身が賢い(自己診断機能がある)。出力回路のショートも自分で検知してOFFできるため、ユニット側は24V直結でOK。
  • 非常停止ボタン:ただのスイッチ(接点)。自己診断なんてできない。

「動くから」といって、非常停止ボタンをライトカーテンと同じように24V直結で配線すると、クロスショート検知機能が無効になります。スイッチを使う場合は、必ずカタログ通りの「テスト出力を使った配線」を守ってください。

セーフティリレーユニットへの配線比較図。左側はテストパルス(T端子)を使用した正しい配線でショート検知が可能。右側は24V電源を直結した危険な配線で、ショートしても異常を検知できない状態(INCORRECT 24V WIRING)を図解。
図:正規の配線(左)と、危険な24V直結配線(右)の動作比較

なぜ「24V直結」の勘違いが起きるのか?

実は、カタログの配線例を見ると、「24V直結でもOKな図」が載っています。それは「ライトカーテン(セーフティセンサ)」を接続する場合です。

配線図の見た目だけ比べると、以下のようになります。

  • ライトカーテンの配線: 24V電源 → ライトカーテン → 入力端子(T12等)
  • NGな非常停止の配線: 24V電源 → 非常停止ボタン → 入力端子(T12等)
セーフティリレーユニットへのライトカーテン接続配線図。OSSD出力(半導体出力)からの信号を24V入力として受け取る回路構成。非常停止ボタン等の接点入力でこの配線を行うと、クロスショート検知が無効になるため注意が必要な「24V直結モード」の例示。
この図はライトカーテンならOKですが、非常停止ボタンで真似をしてはいけません

「見た目は完全に同じ配線」になります。しかし、電気的な「中身」は決定的に違います。

比較ライトカーテン (OK)非常停止などのスイッチ (NG)
信号の正体OSSD出力 (パルス信号)ただの24V (固定電圧)
誰が監視する?ライトカーテン自身誰も監視しない (危険!)
ショートしたらセンサが自分で気づいてOFFするショートしても気づかない (止まらない)

ライトカーテンは賢いので、自分でパルスを出して自己診断しています。だからユニット側は「ただ受け取るだけ(24V直結)」でOKなのです。

一方、非常停止ボタンはただのスイッチ(接点)です。自己診断なんてできません。

「配線図が似ているから」といって、非常停止ボタンをライトカーテンと同じように24V直結してしまうと、「誰もショートを監視していない空白地帯」が生まれ、安全機能が無効になります。

「スイッチはテスト出力(T端子)、センサは24V直結」

この違いを絶対に混同しないようにしましょう。


落とし穴③ リセットは「自動」か「手動」か?

カタログで型番を選ぶとき、「オートリセット(自動復帰)」か「マニュアルリセット(手動復帰)」かで迷うと思います。「自動の方が楽でいいな」と安易に選ぶと、重大な事故につながります。

① 全身が入れる場所は「手動復帰」一択

ロボット柵の中など、作業者が全身ですっぽり入れるエリアの扉には、必ず「マニュアルリセット」を使ってください。

もし「自動復帰」を選んでしまうと、以下の事故が起きます。

  1. メンテナンスで人が中に入る。
  2. 外にいる別の人が「お、扉が開いてるな」と閉める。
  3. 閉めた瞬間に機械が再起動し、中の人が挟まれる。

これを防ぐために、「扉を閉める」+「安全確認をしてリセットボタンを押す」という2アクションがないと起動しない回路にする必要があります。

※リセットボタンは、必ず「柵の中から手が届かない」「柵の中全体が見渡せる」場所に設置しましょう。

② 手しか入らない場所は「自動復帰」もアリ

小さな部品投入口など、物理的に手しか入らない(全身は入れない)場所なら、「自動復帰」を選定してもOKな場合があります。

扉を閉めればすぐに再開できるので、生産性を落とさずに済みます。


落とし穴④ 瞬時停止かオフディレー(遅延)か

最後に、ユニットの出力タイプ選定です。「瞬時接点」だけか、「オフディレー(遅延)接点」付きか。
これは安全規格(ISO 13850)で定められた「停止カテゴリ」に関わってきます。

① 瞬時タイプ(停止カテゴリ0)

非常停止を押した瞬間に電源をバチンと遮断する方法です。 電源を切れば惰性なくすぐに止まる機械に使います。

② オフディレータイプ(停止カテゴリ1)

非常停止を押しても「数秒間だけ電源を残す(またはロックを維持する)」制御です。

  • 慣性対策: 大きなファンやロール機など、電源を切っても慣性で回り続ける場合、完全に止まるまでの時間(タイマー設定)分だけ、ガードロック解除を遅らせるために使います。
  • 制御停止: いきなり電源を切るとワークが破損する場合などに、サーボモーターを減速停止させてから電源を切る用途にも使われます。 (※さらに高度な「STO」や「SS1」といったドライブ制御機能については、別の記事で解説します)
IEC 60204-1に基づく停止カテゴリの動作グラフ。左側は瞬時に電源を遮断する「停止カテゴリ0」、右側は制御された減速を行ってから電源を遮断する「停止カテゴリ1(オフディレー)」の速度と時間の関係図。

忘れがちな「フィードバックループ(EDM)」

ユニットを買って安心していませんか? 最後に外部機器の監視(EDM)を確認しましょう。

セーフティリレーユニットの出力先に、大きなマグネット(電磁接触器)を繋いでモーターを回すとします。 もし、このマグネットが溶着してしまったら? いくらユニット側でOFFしても、マグネットがくっついているのでモーターは止まりません。

対策:フィードバック入力(リセット端子)を使う

そこで登場するのが、以前の記事(電磁接触器の選定編)で紹介したマグネットの「ミラーコンタクト(b接点)」です。

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マグネットのb接点を、ユニットの「フィードバック入力端子(またはリセット端子)」に戻してあげます。 (※端子記号は T31, X1, Y2 などメーカーにより異なります)

こうすると、マグネットが溶着している(b接点が開いている)間は、ユニットが異常を検知して再起動をロックしてくれます。 このループ配線があって初めて、システム全体の安全(カテゴリ)が担保されます。

安全回路の出力側回路図。2つの電磁接触器(KM1, KM2)を直列に接続して冗長化し、接点溶着時に確実に動力を遮断する構成。フィードバック監視の前提となる主回路構成。

まとめ:安全回路は「想像力」で設計せよ

セーフティリレーユニットの選定は、以下の4ステップで決まります。

  1. 目的: 普通のリレーでは防げない「溶着」を監視する。
  2. 配線:ケーブルのショートを見抜くために「専用端子(T端子)」を使う。
  3. リセット: 人が中に入れるなら「マニュアル(手動)」。
  4. 遅延: 慣性があるなら「オフディレー」。

カタログには型式がたくさん並んでいますが、自分の装置の「危険源」がどこにあるかが見えていれば、選ぶべきユニットは自然と決まってきます。

「動けばいい」ではなく「故障しても人を守れるか」。それが設計者の愛であり、責任です。

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