「何から勉強すればいいのか、誰も教えてくれない」 「先輩の図面を見ても、なぜそうなるのか理由が分からない」
そんな孤独な焦りを抱えていませんか?
安心してください。それはあなたの能力不足ではなく、FA業界に「体系的な教科書」が存在しないことが原因です。
FA電気設計(制御設計)の世界は、「PLCのソフトが組めればいい」という単純なものではありません。 電気回路、機器選定、現場配線、通信ネットワーク、そして複雑な安全規格(CE/UL)など、覚えるべき守備範囲は膨大です。
このロードマップは、実務経験9年の現役設計者である私が、「新人の頃の自分に手渡したかった『現場の攻略本』」そのものです。 単なる配線の知識だけでなく、トラブルだらけの現場で生き残るために必要な「実戦ノウハウ」を、「入場券」から「一人前」まで体系化しました。
もう、闇雲にググって時間を浪費するのは終わりにしましょう。 この地図の順番通りに進めば、あなたは最短距離で「現場の即戦力」へと進化できます。
【本記事の使い方】 このページは本ブログの「目次(地図)」です。各分野の解説記事へここから飛べるようになっています。
この記事は「成長するロードマップ」です。
FA電気設計の技術は奥が深いため、一度にすべてを書ききることはできません。 本記事は、ブログの更新に合わせて随時、項目とリンクを追加・更新していきます。 「最終的にはここを見れば全てが分かる」状態を目指していますので、ぜひブックマークして学習の参考にしてください。
最終更新:2026/02/20
STEP 0:まずは「全体像」と「電気の基礎」を知る
電気設計の仕事は、単に図面を引くことではありません。顧客の「やりたいこと(仕様)」を、機械が理解できる「論理(回路)」に翻訳することです。 ここで学ぶ基礎理論は、テストのためではなく、「現場で感電しないため」「機器を壊さないため」の生存知識です。まずは現場の共通言語をインストールしましょう。
電気設計の仕事とキャリア
そもそも電気設計とは何をする仕事なのか? そして、多くの人が勘違いしている「資格」の壁について、まずは誤解を解いておきましょう。
1. 仕事の定義と「電気工事士」の不要論
電気設計とは、鉄の塊である機械に「脈動(命)」を吹き込む仕事です。
▶【仕事内容】電気設計とは? 機械に「脈動」を与える仕事
また、「電気の仕事なら『電気工事士』の資格がいるんでしょ?」とよく聞かれますが、実はメーカーの組立配線には法的義務がありません(もちろん知識は必要ですが)。その法的な境界線と、現場で本当に必要な「もう一つの資格」について解説します。
▶【必須資格】メーカーの配線作業に「電気工事士」は必要?法的な境界線
電気の基礎知識(生存知識)
難しい数式は一旦忘れましょう。現場で必要なのは、「なぜ感電するのか」「どっちがプラスなのか」という直感的な理解です。
1. 「電圧」と「電流」の正体
オームの法則は「水」でイメージすれば一発で分かります。これを知っていれば、「1万ボルトの静電気は痛いだけで済むのに、100ボルトのコンセントは死ぬ」理由が説明できるようになります。(ヒント:死ぬ原因は電圧ではなく電流です)
▶【基礎】電気なんて怖くない!「水」で考えるオームの法則(数式なし)
▶【コラム】1万ボルトの静電気は平気で、100ボルトのコンセントで危険なのはなぜ?
2. AC(交流)とDC(直流)の決定的違い
現場で絶対に言ってはいけない禁句があります。それはAC100Vに対して「どっちがプラスですか?」と聞くことです。制御盤の中にある「激流(AC)」と「整流(DC)」の違いを理解しましょう。
▶【超・基礎】「どっちがプラス?」は禁句!制御盤のAC(交流)とDC(直流)の違い
現場に出る前の「装備」と「用語」
知識があっても、道具と言葉を知らなければ現場ではただの「お客様」です。入場初日に怒られないための準備です。
1. 現場の「三種の神器」と安全装備
テスター、ドライバー、ニッパー。プロが選ぶべき「三種の神器」を紹介します。また、「安全靴や保護メガネなんて大げさだ」と思っていませんか? 現場によってはそれがないと入場すら拒否(門前払い)されます。
▶【形から入ろう】FA電気設計者の「三種の神器」|現場に持っていく必須ツール
▶【新人必読】安全靴と保護メガネは「いらない」?現場入場を拒否される3つの勘違い
2. 現場の「宇宙語」を翻訳する
「盤(バン)」「ダクト」「シーケンサ」「a接点」……現場では専門用語が飛び交います。初心者がフリーズしないための「基礎用語」をまとめました。
▶【基礎用語】FA電気設計の現場で飛び交う「基礎用語」解説まとめ
3. 【番外編】設計スピードを決める「マウス」の選び方
良いドライバーが配線作業を早くするように、良いマウスは図面作成(CAD)を劇的に早くします。「たかがマウス」と侮ってはいけません。9年間で数十個のマウスを試し、腱鞘炎になりかけて辿り着いた結論は、「デスク用と現場用を分ける(二刀流)」ことでした。
これから道具を揃える人は、悪いことは言わないのでこの2つだけは揃えておいてください。
▶【道具選び】デスクではMX Master、現場ではZ3700。9年かけて辿り着いた「マウス二刀流」の極意
STEP 0.5:現場で生き残るための「資格」武装
現場では、資格がないと盤の扉を開けることすら許されません。 知識ゼロで現場に出て「ただ立っているだけ(地蔵)」にならないために、実務で即役に立つ「最強の防具」を最短で手に入れましょう。
技術者としての「パスポート」
FAエンジニアにとって「第二種電気工事士」は、法律上の義務以上に、現場で信頼を得るためのパスポートです。これを持っていないと、試運転でブレーカーひとつ上げ下げできず、肩身の狭い思いをすることになります。
忙しいエンジニアが、満点を目指さず「最短距離で合格点」をもぎ取るための、効率重視の学習ロードマップを公開します。
▶【最短攻略】FAエンジニアに電気工事士は必要?現場で「市民権」を得る最短合格ロードマップ
STEP 1:FA機器の知識を身につける(Components)
機器選定で最も重要なのは「カタログ値(理想)」と「現場環境(現実)」のギャップを知ることです。 ブレーカーは容量だけで選ぶと落ち、リレーは種類を間違えると溶着し、センサーはNPN/PNPを間違えると動きません。 「とりあえずこれ」で選ぶのをやめ、根拠を持って「駒」を選べるようになるのがこのステップのゴールです。
【超・基礎編】そもそも、箱の中には「誰」がいる?
難しい配置や回路図を覚える前に、まずは電気制御の世界の「8人の主役(キャラクター)」を知りましょう。 センサーは「目」、PLCは「脳」、モーターは「手足」。このイメージを持つだけで、機械の仕組みが一瞬で理解できるようになります。
▶︎【まずここから!】機械はどう動く?初心者が最初に覚えるべき「8つの主役」と電気制御の仕組み【NEW】
【基礎編】制御盤の中身・解剖図
主役たちの役割が分かったら、次は彼らが箱の中でどう並んでいるのか、実物の「地図(レイアウト)」を頭に入れましょう。
▶︎【基礎編】 回路図がスラスラ読める!制御盤の中身「3つの住所」と配置の鉄則
電源と保護機器(Power & Protection)
電気を供給する「心臓(電源)」と、事故から守る「盾(ブレーカー)」の選び方です。
1. ブレーカー選定の鉄則
「20Aのブレーカー」と言っても、MCCB(配線用遮断器)とMCB(ミニチュア遮断器)は全く別物です。盤の一次側と二次側での使い分けや、AT・AFといった謎の用語を解説します。
▶【ブレーカー選定】MCCBとMCBの決定的な違い|同じ20Aでも役割は別物な理由
▶【ブレーカー選定】ブレーカー選定の鉄則!AT・AF・IRの決定手順と危険な誤解
2. 漏電と感電のメカニズム
なぜ漏電ブレーカーは「30mA」なのか? アース線が切れた時に人間がスイッチになってしまう恐怖のメカニズムを知れば、アース工事の手抜きができなくなります。
▶【漏電遮断器】なぜ30mA? アース線が切れると「人間がスイッチになる」恐怖のメカニズム
3. DC24V回路の保護(落とし穴)
制御回路(DC24V)の保護に、普通のAC用ブレーカーを使っていませんか? それでは短絡してもトリップせず、電線が燃えます。「電子式」を使うべき理由とは。
▶【電子式ブレーカー】DC24V保護に「普通のブレーカ」は危険!配線が燃える理由と電子式のススメ
4. 電源・トランス・マグネット選定
「容量が足りているのに電源が落ちる」「マグネットの接点が溶着した」。これらのトラブルは、突入電流やピーク負荷を計算していないことが原因です。
▶【パワーサプライ選定】容量だけで選ぶな!「ピーク負荷・熱・トランスレス」で差がつく選定の常識
▶【トランス選定】トランス選定は容量だけ見るな!現場で泣かないための「熱・突入電流・SCCR」の常識
▶【電磁接触器選定】先輩の図面コピペは危険?電磁接触器選定で泣かない3つの急所
▶【サーマル】サーマルのダイヤル、適当に回してない? 「×1.1倍」が不要な理由と、メカニズムの秘密
入力・出力・安全機器(Input / Output / Safety)
センサーやリレーは、間違った種類を選ぶと「動かない」だけでなく「暴走」するリスクがあります。
1. 入出力と配線の「二項対立」
「無電圧(ドライ)」と「有電圧(ウェット)」を取り違えると、電源が衝突して基板が一瞬で火を吹きます。日本(NPN)と海外(PNP)の常識の違いも、この「電圧」の理解がなければショート事故の元です。さらに、永遠のテーマである「ねじ式 vs スプリング式」の端子台論争にも決着をつけます。
▶【無電圧 vs 有電圧】ドライ接点とウェット接点の違いとは? 誤結線で起きる「回り込み」と「短絡」
▶【NPN vs PNP】なぜ日本はマイナスコモン?海外標準との「安全思想」の違い
▶【端子台】ねじ式 vs スプリング式!端子台の選び方とコスト・緩みの違い3選
2. 2線式と3線式の「選定基準」(罠と対策)
「ラクだから」という理由だけで部品を選んでいませんか? 新人設計者が最もハマりやすいのが「2線式センサー」の罠です。カタログのスペック表を読み解けないまま採用すると、最悪の場合、機械が止まらなくなります。 プロが現場で何を計算して2線式を採用しているのか、その「選定の裏側」を解説します。
▶「配線がラク」で2線式を選ぶな。漏れ電流と残留電圧から見るプロの判断基準
3. 温度センサーの使い分け(熱電対 vs Pt100)
「2本線」なら熱電対、「3本線」なら測温抵抗体です。この見分け方を知らないと、入力カードの選定で失敗します。
▶【温度センサー】熱電対と測温抵抗体:どっちを使う? 現場で見分ける方法と使い分けの決定版
4. リレーと安全機器の選定
SSR(ソリッドステートリレー)は無音で長寿命ですが、「放熱しないと爆発する」という弱点があります。また、セーフティリレーも使い方を間違えると、ただの高いリレーになってしまいます。
▶【SSR】SSRの罠!「無音で長寿命」の裏にある「爆熱」と「暴走」リスク
▶【セーフティリレーユニット選定】セーフティリレー選定の落とし穴4選!配線ミスで安全回路が無効になる?
アナログ信号と計測制御(Analog Signals)
ON/OFFだけの制御は簡単ですが、温度・圧力・流量といった「連続する数値(アナログ)」を扱い始めると、難易度は上がります。
なぜ現場では電圧(0-10V)ではなく電流(4-20mA)が使われるのか? 数値がズレる・暴れる時の対処法とは? 現場で一生使える「アナログ制御の完全講義(全4回)」です。
1. 「4-20mA」が選ばれる物理的理由
「電圧の方が見やすいじゃん」と思うのは素人です。プロが電流信号を選ぶのには、ノイズ対策・長距離伝送・断線検知という3つの「サバイバル理由」があります。
▶【基礎】なぜ現場は「4-20mA」なのか? 0-10Vを使わない理由と「断線検知」の仕組み
2. 2線式と4線式、そして「250Ω」の裏技
同じ4-20mAセンサーでも、「2線式」と「4線式」では配線が全く異なります。間違えて買った時に現場を救う、たった数十円の「250Ω抵抗」を使った裏技を伝授します。
▶【配線】センサー選定の罠!「2線式・4線式」の違いと、間違えた時の「250Ω」サバイバル術
3. 数値ズレと「絶縁(アイソレーション)」
「図面通りなのに数値がフラつく」。その犯人は、アース間の電位差による「グランドループ」かもしれません。トラブルを一撃で断つ「アイソレータ」の選定と重要性を解説します。
▶【トラブル】数値ズレの怪奇現象!「グランドループ」と「抵抗不足」を絶縁で断て
4. PLCでの「スケーリング」と「平均化」
「12000」というデジタル値を、どうやって「100℃」に変換するのか? ラダーを書かずに設定だけで終わらせる方法と、数値のチラつきを抑える「移動平均処理」のコツです。
▶【ソフト】12000を100℃に!PLCアナログ変換の「スケーリング」と「平均化処理」
STEP 2:ハードウェア設計と図面作成(Hardware Design)
良い図面とは、「10年後に修理に来た人が、迷わず直せる図面」のことです。 線の太さ、色、アースの取り方にはすべて「事故を防ぐための理由」があります。 自己流で描くと、盤はただの「時限爆弾」になります。ここでは、プロとして守るべき盤設計の「法(セオリー)」を叩き込みます。
配線とケーブル選定(燃やさないためのルール)
図面で最も怖いのは「電線の選定ミス」です。カタログの許容電流を信じて選定すると、盤内のダクトの中で電線が発熱し、被覆が溶けて火災になります。
1. 電線色と「許容電流」の嘘
「赤線=DC24V」と信じていませんか? その思い込みが事故を招きます。また、ケーブル選定ではカタログ値を信じてはいけません。現場のプロが実践する「電流減少係数(0.5掛け)」の鉄則を教えます。
▶【配線色】その「赤線」は本当にDC24Vか? 盤屋が震える「電線色」の罠と、図面より信じるべきもの
▶【ケーブル選定】カタログ値で選ぶと火を吹く?「許容電流」と「補正係数」の正しい計算式
2. 【保存版】現場の安全基準早見表
いちいち計算するのが面倒な人のために、係数0.5を適用済みの「現場で使える選定表」を用意しました。これを印刷してデスクに貼っておけば、選定ミスはなくなります。
▶【選定資料】制御盤用 電線の許容電流とブレーカー選定早見表(係数0.5適用)現場の安全基準はこれ
モーター保護と漏電対策
モーターはただ回すだけでは燃えます。また、インバータを使うと「漏電していないのにブレーカーが落ちる」という怪奇現象が起きます。それらを防ぐ「保護協調」の技術です。
1. モーターを守る「3人の守護神」
なぜブレーカーだけではモーターを守れないのか? 「MCCB(短絡保護)」「MC(開閉)」「サーマル(過負荷保護)」の役割分担を理解しましょう。
▶【モーター保護】モーターを守る「3人の守護神」!MCCBだけでは燃える理由を図解
2. インバータによる「謎のトリップ(誤動作)」
インバータを入れた途端に漏電ブレーカー(ELCB)が落ちる。感度電流を上げる前にやるべき、正しい「高調波対策」と保護協調の正解です。
▶【ELCB誤動作対策】インバータでブレーカーが落ちる! 感度を上げる前の「保護協調」の正解
海外規格と短絡電流(SCCR)
日本国内の常識は、海外では「違法」になることがあります。特に北米(UL規格)や欧州(CEマーキング)に関わる設計者は必読です。
1. 世界のアース事情(TT vs TN)
海外製の装置には、なぜ「漏電ブレーカー」が付いていないのか? それは日本(TT接地)とは根本的に異なる「TN接地」という安全思想で作られているからです。
▶【ELCB海外安全対策】装置に漏電ブレーカーがない!? 日本(TT)と世界(TN)の決定的な違い
2. 50kAブレーカーでも盤は爆発する(SCCR)
北米輸出で最も恐れられる「SCCR(短絡電流定格)」。適合しない機器を使うと、短絡事故の際にブレーカーごと盤が爆発します。UL508Aの基礎を解説します。
▶【SCCR入門】50kAブレーカーでも盤は燃える?UL508Aの罠と回避策【NEW】
徹底抗戦!ノイズ対策(Anti-Noise Strategy)
図面に線としては描かれないけれど、装置を停止させる最大の要因。それが「ノイズ」です。 「おまじない(とりあえずシールド)」では防げません。物理法則に従って「発生源を潰し、通り道を断つ」。全6回にわたるノイズ完全攻略シリーズです。
1. アースと筐体(足場を固める)
まずは「守り」です。アースはゴミ箱ではありません。インバータ(FG)とPLC(SG)を混ぜると何が起きるのか? そして、なぜメーカーは扉に「きしめん(平編み線)」を推奨するのか?
▶【基礎】見えない敵に勝つ!「アース(接地)」と「シールド」の鉄則
▶【分離】FGとSGは混ぜるな!インバータとPLCのアース分離術
▶【筐体】扉のアースは「きしめん」で!ノイズ対策の最終兵器と施工の罠
2. 発生源と電源(元を断つ)
次は「攻め」です。リレーやソレノイドがOFFする瞬間の「断末魔(サージ)」をどう殺すか? そして、ノイズフィルタの効果をゼロにしてしまう「結束バンド」の罠とは?
▶【発生源】ノイズは「発生源」で断つ。ダイオード・CR・バリスタの使い分けと設置場所の鉄則
▶【電源】ノイズフィルタの効果がない?「最強の箱」をゴミにする施工の罠
盤内の熱対策(Heat Control)
ノイズと並ぶ見えない敵、「熱」。夏場にインバータがトリップしたり、電源が短寿命になるのは、設計段階での「熱計算」が甘いからです。「とりあえずファンを付ける」ではなく、計算に基づいた冷却設計を学びます。
1. ファン選定と熱計算
盤内の総発熱量を計算し、必要な風量を持つファンを選定する手順です。フィルターの目詰まりによる圧力損失も考慮します。
▶【熱対策】制御盤のファン選定と熱計算の方法
STEP 3:装置の「頭脳」を作る(PLC & Software)
PLCは工場の脳みそです。初心者はつい「動かすためのプログラム」を書きがちですが、重要なのは「止まらない、修正しやすい構造」を作ることです。 「流れ」に強いラダー図と、「計算」に強いST言語。それぞれの長所を理解し、スパゲッティコード(ぐちゃぐちゃな回路)からの卒業を目指します。
PLC制御の基礎と選定
電気回路(ハード)とラダー図(ソフト)は似て非なるものです。「電気は一瞬で伝わる」のに対し、「ラダー図は上から下へ順番に処理される」という時間の概念(スキャン)を理解しないと、謎のバグに苦しめられます。
1. ラダー図の「時間」と「安全」の鉄則
回路図とラダー図の最大の違いは「スキャンタイム」です。上から下へ処理が流れる仕組みを理解しましょう。
また、初心者が必ずハマる「MOV(連続実行)」と「MOVP(パルス実行)」の違いも、このスキャン(一瞬だけONするのか、ずっとONし続けるのか)を理解していれば怖くありません。
▶【PLC入門】回路図とラダー図は別物!初心者がハマる「上から下へ」の罠
▶【基礎】そのラダー動かないかも?「MOV」と「MOVP」の決定的違い
そして、非常停止ボタンを「b接点」で組まないと断線した時に止まらない(危険)理由も、ハードとソフトの組み合わせで理解しましょう。
▶【図面】「a接点・b接点」の真の意味と、なぜ非常停止はb接点なのか?(自己保持・タイムチャート入門)
2. どのメーカーから覚えるべき?
三菱、キーエンス、オムロン。3大メーカーにはそれぞれ「強み」と「癖」があります。シェア率や学習のしやすさから、初心者が選ぶべき最初の一台を提案します。
▶【PLC選定】PLCメーカー3社の特徴と選び方|三菱・キーエンス・オムロン、初心者はどれから学ぶ?
プログラミングと言語
「ラダー図しか書けない」という状態は、これからの時代リスクになります。複雑な計算やデータ処理はST言語に任せ、流れの制御はラダーで行う「ハイブリッド設計」が現代の最適解です。
1. ラダー vs ST言語論争に終止符を
「ラダーは時代遅れ」という極論に惑わされてはいけません。ブール代数(ON/OFF)が得意なラダーと、数値計算が得意なST言語。「適材適所」の使い分けこそがプロの技術です。
▶【言語比較】ラダーvsST論争に終止符!現場で役立つ「ハイブリッド設計」3つの極意
2. 脱・エクセル管理(変数プログラミング)
まだデバイス番号(D1000など)をエクセルで管理していますか? PLC内で名前(ラベル)をつけて管理すれば、アドレス重複ミスはゼロになります。
▶【変数プログラム】脱・エクセル管理!PLCで「ラベル(変数)」を使うべき3つの理由
3. ST言語の基礎(IFとCASEだけ覚えろ)
ST言語は難しくありません。覚える文法は「IF(もし〜なら)」と「CASE(場合分け)」の2つだけで、実務の9割はカバーできます。
▶【ST言語】覚える文法は2つだけ!「IF」と「CASE」で書く実践ST言語入門
HMI(タッチパネル)設計論
画面設計において「センス」や「かっこよさ」は邪魔なノイズでしかありません。現場が求めているのは、寝不足の夜勤オペレーターが見ても「絶対に誤認しない視認性」です。
IEC規格(国際標準)、人間工学、そしてユニバーサルデザイン(UD)に基づく、「誰が見ても同じ意味に取れる画面」の作り方を解説します。
1. 「センス」を捨てて「規格」で作る
「なんとなく配置したボタン」や「小さすぎるスイッチ」は事故の元です。IEC 60204-1(国際規格)で決まっている色のルールや、人間工学(フィッツの法則)が導き出す「ボタンサイズ20mm」の根拠を知っていますか? まずは「俺流デザイン」を卒業しましょう。
▶【設計論】HMI画面にセンスは不要!IEC規格と人間工学で作る「正解」の設計論
2. 「黒背景」の罠とカラーユニバーサルデザイン
多くの設計者がやりがちな「黒背景に赤文字」の画面。実は、日本人男性の20人に1人(色覚多様性の方)には、その文字が背景に溶け込んで「何も見えない」状態になっていることを知っていますか?
▶【色覚の恐怖】黒背景の赤文字が読めない?現場の20人に1人が抱える色覚の恐怖
では、何色なら見えるのか? 誰もが識別できる「ユニバーサルデザイン推奨のRGB値(背景色はライトグレーなど)」を公開します。これは今すぐコピペで使える「答え」です。
▶【RGB設定値】HMI背景色に「黒」は危険!色弱でも見える最強のRGB設定値公開
3. 「色」に頼らず「形」で伝える
現場では、画面が油で汚れていたり、マニュアルが白黒コピーで配られることが日常茶飯事です。そんな時、色だけで情報を伝えている画面は無力です。「■と▶」のように形を変えるダブルコーディングや、点線・実線を使い分ける「モノクロでも伝わるデザイン」の極意を解説します。
▶【形で伝える】色に頼らず形で伝える!モノクロ印刷でも伝わるFA画面デザインの極意【NEW】
STEP 4:装置を「動かす」(Drive & Motion)
インバータなどの駆動機器は、設定ひとつでモーターを焼き切るほどのパワーを持っています。また、FA現場最大の敵「ノイズ」の発生源でもあります。 「回ればいい」では済みません。パラメータ(設定値)の1つ1つが持つ意味を理解し、トラブルを未然に防ぐ「守りの設定」を学びましょう。
インバータ
インバータはモーターの速度を変える便利な機器ですが、設定や配線を一つ間違えるとモーターを焼損させたり、工場中にノイズを撒き散らす原因になります。「回ればいい」ではなく、寿命と安全を守る設計を学びましょう。
1. インバータの基礎と仕組み
インバータは電圧と周波数を同時に変える(V/f制御)装置です。ただのスイッチだと思っていると、「低速でトルクが出ない」というトラブルに直面します。
▶【基礎】インバータはただの変速機じゃない!中身の仕組みと新人がハマる3つの罠
2. インバータ本体の選定ルール 【NEW】
「モーターと同じkWを選べばいい」と思っていると、試運転で過負荷トリップが発生して冷や汗をかくことになります。カタログのkWではなく「定格電流」を見ること。そして用途(ファンかコンベアか)に合わせて「ND(軽負荷)/HD(重負荷)」を正しく選定するスキルは、配線以前の必須知識です。
▶ 【選定】インバータ容量で失敗しない!「ND/HD」の罠とkWを見てはいけない理由
3. やってはいけない配線と保護
汎用モーターを低速運転すると、冷却ファンも遅くなるため外部サーマルリレーでは保護できずに焼損します。必ずインバータ内部の「電子サーマル」機能を使ってください。
▶【トラブル事例】インバータ回路にサーマルをつけるな! モーターが「低速」で燃える理由と、正しい守り方
また、インバータの二次側(出力側)に電磁接触器(MC)を入れるのは、原則としてNGです。
▶【配線】そのMC、そこに入れたら爆発します。〜致命的な配線ミス8選〜
4. パラメータ設定の極意
マニュアルの数百あるパラメータを全て読む必要はありません。「ベース周波数」「上限周波数」「加減速時間」など、絶対に触るべき5つの項目だけをまずは抑えてください。
▶【設定】インバータのマニュアルは読むな!現場で設定すべき「必須パラメータ」は5つだけ
5. モーター選定とノイズ対策
低速域を多用する場合は、強制冷却ファンがついた「インバータ専用モーター」が必須です。
▶【モータ選定】「インバータ専用モーター」って何が違う? 標準モーターとの「決定的な差」と使い分け
また、不快な「キーン」という金属音はキャリア周波数で消せますが、逆に漏れ電流(ノイズ)が増大します。静音性とノイズはトレードオフの関係です。
▶【ノイズ対策】インバータの「キーン」音、消していいの? ノイズとキャリア周波数の「トレードオフ」を理解せよ
サーボモータ(位置決め・高精度制御) 【NEW】
「指定した位置に、指定した速度で、ピタッと止まる」。この当たり前の動作の裏側では、超高速な計算とフィードバックが行われています。なんとなく使うのではなく、内部の「制御ループ」と「イナーシャ(慣性)」を理解することで、思い通りに動かない時のトラブルシューティングが劇的に早くなります。
1. サーボが「ズレない」仕組みと制御構造
なぜサーボは1パルスのズレもなく止まれるのか? その仕組みは「溜まったパルス(偏差)という借金を、ゼロになるまで返済し続ける」という動作で理解できます。
▶【基礎】なぜサーボはピタッと止まる?仕組みは「借金返済」で理解せよ
また、パラメータ調整で迷子にならないためには、内部にある「位置・速度・電流」という3つの制御ループ(上司と部下の関係)をイメージすることが重要です。
▶【制御】サーボのパラメータ地獄から脱出!内部の「3つのループ」を組織図で解説
2. 選定の落とし穴「イナーシャ比」
サーボ選定で最も恐ろしいのは、「トルク(パワー)は足りているのに、うまく制御できない」という現象です。この犯人の多くは「対負荷イナーシャ比」です。カタログのトルク値だけで選ぶと現場で泣くことになります。
▶【選定】トルク選定の罠!試運転で泣かないための「イナーシャ比」攻略法
3. 実践!MR-J5の調整と制振制御
三菱電機のMR-J5は高性能ですが、「ワンタッチ調整」任せにするだけでは性能を引き出せません。自動調整と「オートチューニング」の使い分けを知っておきましょう。
▶【MR-J5】ワンタッチ調整だけでOK?オートチューニングとの正しい使い分け
装置のアーム先端が「ポヨン」と揺れる残留振動。これはゲインを上げるだけでは止まりません。「アンプの中の幽霊(モデル)がフェイントをかけて揺れを消す」という制振制御の驚くべき仕組みを解説します。
▶【MR-J5】アーム先端の「ポヨン」を消す!制振制御の設定と残留振動対策
4. 安全設計(ネットワークセーフティ)
まだサーボの電源遮断にマグネット(MC)を使っていますか? ネットワーク安全(CC-Link IE TSN)を使えば、動力配線のMCを撤廃し、非常停止からの復旧時間を「ほぼゼロ」に短縮できます。
▶【MR-J5】配線地獄からの解放!ネットワーク安全で実現する「0秒復旧」の現場
STEP 5:応用スキル:機械安全とネットワーク(Applied Skills)
今や「安全」は感情論ではなく、ISO規格に基づく「論理的な計算」で証明する時代です。 また、配線を減らしデータを吸い上げる「産業用ネットワーク」の知識も避けては通れません。 ここまでの知識を総動員し、世界基準で通用する「モダンな設計者」になるための最後のステップです。
機械安全・機能安全(Machine Safety)
「安全第一」はスローガンではありません。「人は間違える、機械は壊れる」という前提に立ち、事故の確率を計算で許容レベルまで下げる設計手法です。
1. 安全設計のロジックと法律
リスクアセスメントを行わずに設計することは、目隠しで運転するようなものです。まずはISO12100に基づく「3ステップメソッド」と、法律との関係を理解しましょう。
- ▶【ISO12100】警告シールで逃げるな!ISO12100と「安全第一」の本当の意味
- ▶【書き方】リスクアセスメントシートの書き方!危険を計算する3つの手順
- ▶【法規制】ISOを守らないと違法になる?機械安全と労働安全衛生法の怖い関係
2.「普通の機器」を使ってはいけない理由
最も重要なルールは、「安全機能に汎用PLCや汎用リレーを使ってはいけない」ということです。なぜなら、それらは故障した時に「接点が溶着して止まらなくなる(危険側に故障する)」可能性があるからです。
3. 安全レベルの計算(SILとPL)
「どのくらい安全か?」は、SIL(シル)やPL(パフォーマンスレベル)という指標でランク付けされます。最高ランクの「PLe」を達成するために必要な「4つの食材(カテゴリ、DCなど)」を解説します。
4. 現場の具体的対策
インターロックの設計思想や、最近話題の「非常停止ボタンのカバー」の是非など、現場レベルの実践知識です。
- ▶【インターロック】インターロックで現場を守れ!フェールセーフとフールプルーフ3つの必須知識
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産業用ネットワーク:プロトコルと理論(Network Protocols)
昔ながらのハード配線(電線)だけでは、これからの装置は作れません。EtherNet/IPを中心としたネットワーク技術を理解し、「配線レス」かつ「情報が見える」装置を作りましょう。
1. EtherNet/IPと通信の仕組み
世界標準であるEtherNet/IP。重要なのは、制御用の「Implicit(サイクリック)」と、情報収集用の「Explicit(メッセージ)」を使い分けることです。また、その裏側にある共通言語「CIP」を知れば、メーカーが違っても繋がる理由が分かります。
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2. トレンドと安全通信
なぜ普通のLANケーブルの中に、人命に関わる「非常停止信号」を流しても大丈夫なのか? それを実現する「ブラックチャンネル」の技術と、通信遅延をゼロにする「TSN」について解説します。
3. 現場の「つなぎ方」
インダストリー4.0の主役「OPC UA」と、地味だけど間違えると通信不能になる「コネクタのピン配列」まとめです。
まとめ:焦らず、現場の課題に合わせて辞書のように使おう
これら全てを一度に覚える必要はありません。
実務の中で「ケーブルはどう選べばいいんだっけ?」「インバータのエラーが出た」といった課題にぶつかった時、この記事に戻ってきて該当するSTEPの項目を読んでみてください。
現場の目の前の課題を一つずつクリアしていくことが、一人前の電気設計者への最短ルートです。